もう一度観たいあの映画 VOL.47『ファーザー』
主演:アンソニー・ホプキンス
【STORY】
ロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニーは記憶が薄れ始めていたが、娘のアンが手配する介護人を拒否していた。そんな中、アンから新しい恋人とパリで暮らすと告げられショックを受ける。だが、それが事実なら、アンソニーの自宅に突然現れ、アンと結婚して10年以上になると語る、この見知らぬ男は誰だ? なぜ彼はここが自分とアンの家だと主張するのか? ひょっとして財産を奪う気か? そして、アンソニーのもう一人の娘、最愛のルーシーはどこに消えたのか? 現実と幻想の境界が崩れていく中、最後にアンソニーがたどり着いた〈真実〉とは──?
【REVIEW】
誰にでもいずれは訪れる老いによる記憶の喪失。83歳になるアンソニー・ホプキンスが認知症の出始めている父・アンソニーを、「女王陛下のお気に入り」でアカデミー賞主演女優賞に輝いたオリヴィア・コールマンが仕事を抱えながら献身的に父・アンソニーの世話をする娘・アンを演じています。そして、アンソニー・ホプキンスは、この映画でアカデミー賞主演男優賞を獲得、「羊たちの沈黙」(ハンニバル・レクター博士役)に次いで2度目、約30年ぶりの受賞になります。
この映画、認知症のアンソニーの視点で描かれています。そのために、今いる場所(住まい)、娘以外の人物、過去と現在の時間軸などが彼の記憶の混乱または幻想の中であやふやなんです。誤解を恐れずに言うと、10分前の記憶がなくなる前向性健忘症の保険会社の調査員を主人公にしたクリストファー・ノー
ラン監督の「メメント」を観ているようです。「メメント」ほど難解ではありませんが、本作も物語が進むにしたがって、アンソニーの置かれている現実が徐々にわかってくる、どこかサスペンスタッチの演出になっています。
認知症を題材に老いた父と娘のドラマとしての見どころは十分あるのですが、ストーリーを解き明かしていくことに集中してしまう映画でもあります。2度、3度と見直さないために…ヒントは、キッチンと窓からの景色ですね。主人公のアンソニー同様に、観ている側も混乱しやすいので、お気を付けください。
こちらは妻の認知症と彼女を支える夫、二人の老夫婦を真正面からとらえた映画。アカデミー賞外国映画賞とカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞しています。
◇『愛、アムール』
アンソニー・ホプキンスというと、どうしてもレクター博士の印象が…
◇『ハンニバル』
オリヴィア・コールマン、18世紀初頭のアン女王役でアカデミー賞主演女優賞に!
◇『女王陛下のお気に入り』
過去に「もう一度観たい映画」に登場した「メメント」、もう一度観たいというよりは「もう一度観ないとわからない映画」かもしれません。
◇『メメント』
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◇『もう一度観たいあの映画』
もう一度観たいあの映画 VOL.47『ファーザー』
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